世界ではちゃくちゃくとR-CPDの治療が進んでいる
今回は、最新の研究論文
”Origin and In-Office Treatment of Retrograde Cricopharyngeus Dysfunction”
『逆行性輪状咽頭筋機能障害の原因と診療所内治療』(Marie Mailly ら)について紹介したいと思います。この論文は、JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery誌に2025年1月30日に公開されたもので、R-CPD(逆行性輪状咽頭筋機能障害)に関する重要な知見が含まれています。
「ゲップが出せない」「お腹が張る」「胸がムカムカする」…こうした症状に悩まされている方も多いと思いますが、実はこれ、R-CPDという病気の可能性があります。この記事では、R-CPDの原因や治療法、そして最新の研究結果をわかりやすく解説していきます!
R-CPDとは?
まず、R-CPD(Retrograde Cricopharyngeal Dysfunction)とは何なのかを簡単に説明します。
本来、食道の入り口にある輪状咽頭筋は、飲み込んだ食べ物や飲み物を食道に送り込む働きをしています。しかし、この筋肉が適切に機能しないと、食道から胃にかけての圧力調整がうまくいかず、「ゲップができない」状態が続きます。
その結果として、以下のような症状が現れます。
ゲップができない(一番特徴的な症状!)
お腹の張り(ガスが溜まりやすい)
胸の圧迫感や不快感
吐き気や食欲不振
しゃっくりが止まらないことがある
「単にゲップが出ないだけ」と思いがちですが、日常生活に支障をきたすこともあり、場合によっては食事や睡眠の質を大きく低下させることがあります。
最新の研究結果
今回の論文では、2022年4月から2024年5月にかけて、フランスの学術病院で106名のR-CPD患者を対象に調査が行われました。その結果、以下のような重要な知見が得られています。
1. R-CPDは先天的な可能性が高い
調査対象のうち 64.2%の患者が「生まれつきゲップが出せなかった」 と報告。さらに、 29.0%の患者には家族歴がある ことが明らかになりました。
つまり、「ゲップが出せない」という体質は、ある程度遺伝的な要因が関係している可能性があるということです。
2. 診断に至るまでのハードルが高い
この研究では、 患者の99.1%が診断を受けるまでに複数回の医療機関を受診していた ことも分かりました。
R-CPDはまだ認知度が低いため、「逆流性食道炎」「機能性ディスペプシア(胃の不調)」と誤診されることが多く、正しい診断を受けるまでに時間がかかるケースが多いのです。
実際、多くの患者は自分でR-CPDの存在を調べて自己診断し、専門医を探して治療にたどり着いている という現状があります。
3. 有効な治療法:ボツリヌス毒素注射(BTI)
この研究では、診療所内で行う「ボツリヌス毒素注射(BTI)」の効果についても詳しく調査されています。
ボツリヌス毒素を輪状咽頭筋に注射することで、筋肉の緊張を和らげ、ゲップがしやすくなると考えられています。
治療の成功率は90.6%!
24.5%の患者は追加の注射が必要(効果が持続しにくいケースもある)
家族歴のある患者は単回の注射での成功率が低い
また、治療の副作用として 70.6%の患者が一時的な嚥下障害を経験 しており、平均持続期間は16.3日とのことでした。
まとめ
今回紹介した研究では、R-CPDの診断と治療に関して以下のような重要なポイントが明らかになりました。
✅ R-CPDは生まれつきの可能性があり、家族歴が関係しているケースも多い
✅ 診断を受けるまでに時間がかかり、誤診されることが多い
✅ ボツリヌス毒素注射(BTI)は高い成功率を示しており、有効な治療法の一つである
✅ ただし、一部の患者では追加の注射が必要になり、副作用(嚥下障害)も報告されている
R-CPDはまだ一般的には知られていない疾患ですが、最近になってようやく医学界でも注目され始めています。
「もしかして、自分もR-CPDかも?」と思った方は、専門医に相談してみることをおすすめします!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
参考文献
Marie Mailly ら 『Origin and In-Office Treatment of Retrograde Cricopharyngeus Dysfunction』JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery, 2025年1月30日
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